F1の名門チーム、マクラーレンが、1991年から2023年までの歴史を彩ったF1マシン5台を売却すると発表しました。
今回の売却対象には、伝説のF1ドライバーとして知られるアイルトン・セナがテスト走行した1991年型マシンや、7度のワールドチャンピオンに輝いたルイス・ハミルトンがテストしたマシン、さらに2025年公開の映画『F1/エフワン』で主演を務めた俳優ブラッド・ピットが試乗したマシンも含まれています。
注目すべきは、その価格です。正式な販売価格は公表されていませんが、1台あたり約10億5,000万円から約21億円に達すると予想されています。
なぜ、これほど高額なF1マシンが販売されるのでしょうか。売却対象となる5台の特徴とともに、その背景を解説します。
マクラーレンが歴代F1マシン5台の売却を発表
2026年10月18日、マクラーレンは自社が保管してきた歴代F1マシン5台を売却すると発表しました。
対象となるのは、1991年型の「MP4/6A」2台、2012年型の「MP4/27A」、2021年型の「MCL35M」、そして2023年型の「MCL60」です。
いずれも実際のF1活動で使用された車両で、マクラーレンがレースでの役目を終えた後も保管してきた貴重なマシンです。
販売は高級車・レーシングカーの専門ディーラーであるトム・ハートリーJr.を通じて、1台ずつ行われる予定です。引き渡しに向けた整備もマクラーレンが担当します。
今回の売却は、単に古いレーシングカーを手放すという話ではありません。30年以上にわたるF1の技術や歴史を象徴するマシンが、チームの保管庫を離れ、新たなオーナーのもとへ渡ることになります。
売却されるF1マシン5台を紹介
1. 1991年型 MP4/6A:アイルトン・セナがテスト走行した名車
今回の売却対象のなかでも、特に歴史的価値が高いと考えられるのが、1991年型の「MP4/6A」です。
このマシンには、ホンダ製の3.5リッターV12エンジンが搭載されています。V12とは、12個のシリンダーをV字型に配置したエンジン形式です。当時のF1を象徴する高回転型エンジンのひとつでした。
MP4/6は、アイルトン・セナが1991年シーズンに自身3度目のドライバーズタイトルを獲得したマシンとして知られています。
今回売却される2台は、シャシー番号04と07の個体です。実際のレースでは主にゲルハルト・ベルガーが使用し、セナもテスト走行を行いました。
ここで重要なのは、2台ともセナが実際のレースで使用した車両というわけではなく、セナがテストした履歴を持つマシンだという点です。
それでも、セナがタイトルを獲得したシーズンのマシンであり、ホンダとの関係も深いことから、F1ファンやコレクターにとって特別な存在といえるでしょう。
2. 2012年型 MP4/27A:ルイス・ハミルトンとジェンソン・バトンにゆかりのあるマシン
2012年型の「MP4/27A」も、今回の注目車両のひとつです。
このマシンは、ジェンソン・バトンが実際のレースで使用した個体で、ルイス・ハミルトンもテスト走行を行っています。
2012年のマクラーレンは高い競争力を発揮し、シーズン中に7勝を記録しました。
ハミルトンはこの年にマクラーレンで3勝を挙げ、シーズン終了後にメルセデスへ移籍しました。そのため、2012年はハミルトンとマクラーレンの関係を振り返るうえでも印象深いシーズンです。
なお、今回売却される個体については、バトンがレースで使用し、ハミルトンがテストしたという履歴がポイントです。
3. 2021年型 MCL35M:ランド・ノリスが使用したマシン
2021年型の「MCL35M」は、ランド・ノリスがレースで使用したマシンです。
この年のマクラーレンは、ノリスとダニエル・リカルドのコンビで戦い、イタリアGPではワンツーフィニッシュを達成しました。
ノリスは若手ドライバーとして存在感を高め、チームの将来を担う存在として注目を集めていました。
今回の売却対象は、実際のレースで使用された履歴を持つシャシー番号01の個体です。現代F1のマシンがどのように進化してきたのかを知るうえでも、興味深い1台です。
4. 2023年型 MCL60:ランド・ノリスの活躍を支えたマシン
2023年型の「MCL60」も、ランド・ノリスがレースで使用したマシンです。
マクラーレンは2023年シーズン序盤に苦戦したものの、マシンの改良によって後半戦に大きく競争力を高めました。ノリスは複数回の表彰台を獲得し、チームの復調を印象づけました。
このマシンは、マクラーレンが再び上位争いへ戻っていく過程を象徴する存在です。
また、映画『F1/エフワン』の撮影に関連して、ブラッド・ピットが2023年型マシンを試乗したことでも知られています。
俳優が実際のF1マシンを体験したというエピソードは、モータースポーツファンだけでなく、映画ファンにとっても興味深いポイントでしょう。
5. 2021年型・2023年型のマシンが持つ現代F1の価値
今回の5台は、1991年型のV12エンジン搭載車から、近年のF1マシンまで幅広い時代をカバーしています。
F1マシンは、エンジンや空力設計、サスペンション、電子制御など、その時代の技術が凝縮されたレーシングカーです。
さらに、実際のレースで使用された車両には、参戦履歴やドライバーとの関係といった固有のストーリーがあります。
そのため、単に同じ年式・同じモデルというだけではなく、どのシャシーが誰に使用され、どのようなレースを経験したのかが、価値を左右する重要な要素になります。
※今回の5台の内訳は、1991年型MP4/6Aが2台、2012年型MP4/27Aが1台、2021年型MCL35Mが1台、2023年型MCL60が1台です。
売却価格は1台約10億5,000万円から最大約21億円?
今回のマシンについて、マクラーレンは正式な販売価格を公表していません。
報道では、1台あたり500万〜1,000万ポンド程度の価格が予想されています。日本円に換算すると、為替レートによって変動しますが、およそ10億5,000万円から21億円規模に相当します。
もちろん、これはあくまで予想価格であり、実際の販売価格が確定したわけではありません。
それでは、なぜF1マシンにはこれほどの価値がつくのでしょうか。
主な理由は、次の3つです。
1. 実際のF1レースで使用された希少性
F1マシンは大量生産される市販車とは異なり、チームがレースのために製作・開発する特別な車両です。実戦で使用された個体が市場に出る機会は限られています。
2. 有名ドライバーとの歴史的なつながり
セナやハミルトン、ノリスといった著名ドライバーとの関係は、コレクターにとって大きな魅力です。世界選手権の歴史に結びついた車両であることが、希少価値を高めます。
3. チームから直接販売されるという来歴の明確さ
今回の5台は、レースでの使用を終えた後もマクラーレンが保管してきた車両です。来歴を確認しやすく、チーム自身が引き渡しに向けた整備を行うことも、購入を検討するコレクターにとって重要な要素になります。
こうした条件が重なることで、一般的な中古車とは比較にならない価格が予想されているのです。
なぜマクラーレンは歴代F1マシンを売却するのか?
今回の発表で気になるのが、なぜ名門チームが貴重なマシンを手放すのかという点です。
マクラーレンのCEOであるザク・ブラウンは、マシンを保管庫に置いたままにするのは、その歴史的な価値を十分に生かせないという考えを示しています。
マシンは走行し、レースをするために造られたものです。新しいオーナーのもとで実際に使用され、楽しまれることが、マクラーレンの歴史を未来へつなぐ方法のひとつだと説明しています。
つまり、今回の売却について、チームは単純な資金確保を理由として掲げているわけではありません。歴史的なマシンを保管するだけでなく、実際に走らせられる状態で新たな所有者へ引き継ぎ、チームのヘリテージ事業を活性化させることが主な目的です。
ここでいう「ヘリテージ」とは、チームが築いてきた歴史や伝統、過去のマシンなどを保存し、次の世代へ伝えていく取り組みを指します。
今回の5台は、マクラーレンがレースで使用した後も保管してきた車両です。売却にあたってはチームが整備を担当し、次のオーナーが楽しめる状態で引き渡す予定です。
F1マシンは、博物館やコレクションで展示されるだけでなく、適切な整備やサポートがあれば、イベントなどで走行することもあります。今回の売却は、そうした形で歴史的なマシンを活用してもらう狙いもあると考えられます。
まとめ:F1の歴史を次の世代へつなぐ5台
今回、マクラーレンが売却する5台には、1991年のセナの時代から、ハミルトンやバトン、ノリスが活躍した時代まで、チームの歴史が詰まっています。
1台あたり約10億5,000万円から約21億円という予想価格は驚くべきものですが、その価値はマシンそのものの性能だけで決まるわけではありません。
実際にレースで使用された履歴、歴史的なドライバーとの関係、そしてマクラーレンが保管してきたという来歴が、特別な価値を生み出しています。
今回の売却は、名車を手放すというだけでなく、マクラーレンの歴史を新たなオーナーへ引き継ぐ取り組みでもあります。
今後、実際にどのような価格で取引され、次のオーナーのもとでどのように活用されるのかにも注目が集まりそうです。
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